連載 運動療法に活かすための神経生理(学)・第2回
静的ストレッチングは伸張時間により柔軟性および筋出力に及ぼす影響に差異はあるか?
谷澤 真
1
Makoto YAZAWA
1
1獨協医科大学埼玉医療センターリハビリテーション科
pp.939-943
発行日 2024年8月15日
Published Date 2024/8/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1551203559
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はじめに
静的ストレッチングは運動療法において用いられる頻度の高い重要な手技の一つである.静的ストレッチングにより期待される効果は,関節可動域の改善,痙縮の抑制,疼痛軽減,血液循環の促進,障害予防,神経-筋伝達機能の促進など多岐にわたる.
一方,静的ストレッチングの即時効果として,筋力低下やパフォーマンス低下も指摘されている1,2).先行研究3,4)では,伸張時間の差異により静的ストレッチングの効果は異なることが報告されており,臨床場面で用いる際には,その点を考慮したアプローチが望ましい.
本稿では,筆者ら3)の研究をもとに,静的ストレッチングにおける伸張時間の違いがもたらす神経生理学的な効果の差異について解説する.紹介する研究は,特に短時間の静的ストレッチングに注目したものである.それまで静的ストレッチングに関する研究は,30秒かそれ以上の長い伸張時間による効果を扱ったものが多かった.一方,実際に臨床で行われるストレッチングの多くは6秒程度と短い伸張時間にとどまっており,30秒間と6秒間の静的ストレッチングを比較することで効果の違いを明らかにしたものである.
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