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はじめに—歩行速度と下肢筋力の関係
歩行速度と下肢筋力の関係は直線関係ではなく,ある筋力閾値を想定したモデル(図)がより適合する1,2).筋力閾値以上の筋力をもつ症例A,Bは,筋力が異なる一方で歩行速度には差がない.しかし,症例Bの下肢筋力は筋力閾値に近似しており,筋力低下が進行すれば歩行速度が制限される.症例Cは筋力閾値を下回っており,歩行速度がやや低下している.症例Dは筋力閾値を大きく下回っており,著しく歩行速度が制限されている.症例Eは筋力閾値を上回っているが,歩行速度は制限されている.片麻痺や下肢関節可動域の制限など,筋力以外の問題を有することが推測される.
下肢筋力が筋力閾値より上の対象者では,歩行速度から下肢筋力を推定することは不可能であろう.しかし,筋力閾値以下の対象者であれば,歩行速度によって筋力を推測することができる.また,筋力以外の要因によって歩行速度が修飾される症例では,歩行速度から筋力を推測することはできない.よって,本稿のデータは,運動器疾患のない高齢患者に限定した.
歩行速度では,快適歩行速度と最大歩行速度の2種類が用いられる.快適歩行速度では対象者の努力程度が曖昧となるため,さまざまな環境因子によって測定値が修飾される.先行研究3)では,快適歩行速度を測定する際,その前に速歩を行っていると歩行速度が速くなり,ゆっくり歩くと歩行速度が遅くなることが示されている.一方最大歩行速度では,歩行率と歩幅との間に一定の関係を示し,膝伸筋群や足底屈筋群の筋活動(筋力)との相関が明らかで,より大きな膝伸筋群や足底屈筋群の筋活動(筋力)が必要となる.そこで,本稿では最大歩行速度によって下肢筋力を推測する.
なお,下肢筋力の評価は,安価で,簡便性・汎用性・信頼性に優れ,多くの臨床データが蓄積されているベルト固定を併用したhand-held dynamometer(HHD)によって測定された等尺性膝伸展筋力を下肢筋力の代表値として用いた4).
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