連載 とびら
人と歩行,またひとつの価値観
梅田 匡純
1
1京丹後市立弥栄病院リハビリテーション科
pp.729
発行日 2021年7月15日
Published Date 2021/7/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1551202357
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漠然とした思いでこの世界に入り30年が過ぎました.15年を過ぎたころ,ひとりの理学療法士の「理学療法士の君があきらめたとき,目の前の患者さんはもう歩くことはできないんだよ」という言葉を耳にしたとき,理学療法士としての「ひとつのとびら」が開いたと記憶しています.その後の私の理学療法観は,「歩行」を中心に据えたものとなり,リハビリテーションのなかでは少し偏ったものであったかもしれません.
「職業復帰」,養成校時代からリハビリテーションを象徴するものとして,この言葉が頭に残っている方は少なくないと思います.私もそれをめざし,幸運にも現職復帰を果たした患者さんは成功事例として記憶に残り,よき経験値として蓄積されています.しかしその一方で,私のリハビリテーションスキルが及ばず,後遺障害により移動手段やコミュニケーション方法が現職の環境に適応することが難しいと判断され,退職を選ばれた患者さんに多く出会ったのも事実です.
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