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理学療法士にとって「物理療法」は「運動療法」と双璧の固有技術である.その「物理療法」が外的要因のみならず,内的要因からも疎んじられているかのような今日の風潮は,物理療法を専門分野として国民の健康増進に携わってきた者から見ると大変残念である.従来の保険制度のなかのみではなく,介護予防,障害重症化予防,災害関連死予防などの予防や健康,美容に対する物理療法のニーズは多く,理学療法で整理されている物理療法の開放は避けて通れない.在宅という枠のなかで,今後積極的に理学療法士が物理療法の活用を担い,社会還元しなければ,その普及はもとより,国民の健康に寄与する手段の1つを失いかねない.まずは基本的な実践活用のハンドブックとなり得る絶妙の良書が本書である.まさにタイムリーな出版である.
本書には「痛み」,「筋力低下」,「麻痺」,「痙縮」,「関節の可動域制限」,「その他の症状(肩関節の亜脱臼,浮腫)」と大きく6つの障害で章立てされ,それぞれで物理療法の種類とその目的,治療姿勢,設定条件,治療部位で構成される「case」が18と,診断名,基礎情報,物理療法,結果で構成される「case report」が16収載されている.この18 caseと16 case reportは臨床実践家にとっては,頻繁に遭遇する障害とモデル症例である.さらに,それぞれに「さっちゃんのワンポイントアドバイス」という形式でコツ(tips)が記載されている.最後に「電気刺激療法の基本」,「超音波療法の基本」,「禁忌・注意事項」を資料として1つの章としている.こうした基本事項は書籍の冒頭に編集しがちであるが,著者の臨床での活用を重視した,大きな懐が嬉しい限りである.
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