書評
奥坂拓志,羽鳥 隆(編)「膵癌診療ポケットガイド」
元雄 良治
1
1金沢医大・腫瘍内科学
pp.1464
発行日 2010年10月20日
Published Date 2010/10/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407103237
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研修医が希望する本は,ポケットに入るサイズで,読みやすい,という条件がある.本書はまさにそれを満たしており,本書の読者対象である研修医や膵癌診療に携わっている若手医師には心強い味方である.特に豊富な図や写真は,要点が一目瞭然で理解でき,長い文章よりも効果的である.例えば,103~108ページの膵癌進展度評価では,「上腸間膜静脈浸潤を伴う膵頭部癌」と「上腸間膜静脈浸潤を伴わない膵頭部癌」のCT画像を横断像と3D像で比較しながら示している.ほかにも,ある所見を伴う例と伴わない例を図示しているので,日頃症例検討会で先輩医師が議論の対象にしている重要所見について,典型的画像を自己学習できる.内視鏡診断のポイントでは,鮮明な写真で内視鏡機器や内視鏡像が呈示されており,非常にインパクトがある.
治療では切除可能例と切除不能例に分け,特に化学療法に関しては,各レジメンの図示,禁忌や休薬・再開の方法・副作用対策(192~194ページには患者説明用の記載あり)についての具体的な記述が大変参考になる.またフルオロウラシルやS-1とほかの薬剤の併用療法の中でオキサリプラチンを取り上げ,現時点ではまだ保険適用未承認ではあるが,最新情報を知ることができ,著者同様に読者も臨床試験の結果に注目したくなる内容である.治療効果の判定には2009年に改訂されたRECISTガイドラインver. 1.1の要点が表3-17として掲載されている.
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