書評
—上杉雅之(監)/杉元雅晴,菅原 仁(編著)—「イラストでわかる物理療法」
奈良 勲
1
1広島大学
pp.919
発行日 2019年9月15日
Published Date 2019/9/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1551201662
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本書は,医歯薬出版が発行している「イラストでわかるシリーズ」の1つ『イラストでわかる物理療法』である.通常,物理療法と称するなかには,水治療法,電気療法,などが含まれているが,本書はそれらを総称した名称である.これまでも物理療法の書籍は発行されているが,本書は主に学生や新人理学療法士を読者層としている.よって,第1章から15章で構成され,養成校の一学期の15回の授業に合わせて企画されている.本書では,総論,すべての物理的手段のエッセンス,定義と効果,治療目的,適応,禁忌,図を多用した具体的実施手順,症例,トピックス,先輩からのアドバイス,設問,そして病態生理の科学的基礎などが詳細に網羅されており,安全管理と疾患別物理療法の章もある.つまり,想像以上に複雑な物理療法の機序を特に初学者にはたいへん理解しやすく記述されている.
理学療法(physiotherapy:英国,physical therapy:米国)の歴史的起源は,古代ギリシャのヒポクラテスやいわゆる東洋医学などの自然界の物理的エネルギーを活用していたことに由来している.前者のphysiotherapyはphysiology(生理学)の接頭語が用いられているが,これは一般的治療原則のうち理学療法にも含まれている「刺激・誘導・補助・情報」であり,生体の望ましい生理学反射,反応,行為,行動を得るためである.一方,physicalの意味は正しく物理的治療手段を表している.双方の目的自体に相違はないが,治療手段を問わず治療機序を表すphysiotherapyの名称は,現在の理学療法の内容に合致していると考える.
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