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書評 —上杉雅之(監)—「—99のWeb動画付—イラストでわかる小児理学療法学演習」
米津 亮
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1神奈川県立保健福祉大学保健福祉学部リハビリテーション学科
pp.647
発行日 2018年7月15日
Published Date 2018/7/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1551201247
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小児の理学療法を学ぼうとする学生とって理解を得るのが難しいことは何か? それは,「障がい児の特異的な発達」と「障がい児の理学療法のプランニング」に集約されるのではなかろうか.このような学生の悩みに応えた,これまでにありそうでなかった書籍が本書である.その特徴は,各疾患のさまざまな発達過程を動画視聴できる点と臨床場面をイメージしやすいようクリニカルリーズニングの構成を行った点にある.
例えば,脳性麻痺が,異常な姿勢・運動を示す疾患群と定義されても,その臨床像は,痙直型やアテトーゼ型の病型,そして片麻痺・両麻痺・四肢麻痺の障害部位により異なる.学生は,このような多種多様な臨床像を,臥位から坐位,立位・歩行と発達段階に応じて整理しなければならない.しかし,実際の障がい児の姿勢・運動を観察できなければ,その理解は難しい.本書は,このような学生の悩みを解決できるよう,ここぞというタイミングで特徴的な姿勢・運動に対する動画視聴が盛り込まれている.そのため,学生が,障がい児の姿勢・運動の特徴について,より明確なイメージをもてるよう「わかりやすさ」,「興味を引き出す」ことに配慮されている.このような動画視聴が,小児領域の重要な疾患である脳性麻痺のみならず,早産・新生児仮死などのリスク児から,ダウン症,デュシャンヌ型筋ジストロフィー,先天性多発性関節拘縮症・二分脊椎などの小児整形疾患,さらには広汎性発達障害までカバーされている.このことは,学生にとって「障がい児の特異的な発達」の理解を深める大きな機会になるであろう.
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