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どの写真にも背が高く(177.8cmあったという),意志の強靱さを感じさせるきりりとした表情をもつ女性が写っている.彼女こそわが国で「片麻痺の回復段階ステージ」の開発者として最もよく知られた理学療法士であるアンナ・シグネ・ソフィア・ブルンストローム氏である.本書は,自身も理学療法士であるSchleichkorn博士によるシグネブルンストローム氏の生誕からその一生を終えるまでの伝記であり,真実の物語である.
1898年1月1日にスウェーデンに誕生したシグネは,スウェーデン王立中央体育学研究所で学び1919年に卒業後,スウェーデンの温泉保養地で「徒手体操」の技術を生かし,さらにスイスでクリニックを開業した.その後1928年にアメリカ合衆国ニューヨークに到着し臨床家としてその活動を始めたのである.その後ニューヨーク大学において教育学修士号を授与され,1938年にはニューヨーク大学の講師に就任している.第二次世界大戦勃発後にシグネは民間人理学療法士として,テキサス州の陸軍航空基地病院に志願して派遣された.さらに1950年,フルブライト基金によってギリシアでの整形外科と神経科学におけるリハビリテーションに関する「客員講師」として赴任した.この頃のシグネの著作は『切断者マニュアル』であったという.このときギリシアに理学療法士養成校を立ち上げようとした計画は地元医師たちの妨害によって挫折を余儀なくされたと記されている.帰国後,1954年ニューヨーク州のバークリハビリテーションセンターでの勤務を始める.その後,『臨床運動学』(1962年),『片麻痺の運動療法』(1971年)など多くの著作,講演,教育活動をこなしていく.ちなみに1967年3月に渡米した東京大学医学部附属病院の上田敏先生,福屋靖子先生との面会についても記されている.
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