恩師の頁
川添正道先生に就いて
中島 精
1
1慶大
pp.22-24
発行日 1952年6月1日
Published Date 1952/6/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611200122
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川添先生と健康
私が川添先生の教えを受けるようになつたのは大正14年の春からで,今日迄約28年間になるその間先生は殆ど病気らしい病気は10年前に丹毒にかかられた時位で,常に御健康で診察に従事せられておることは,羨ましい気もするが,弟子として有難い事だと思つている。それは親が何時迄も生きておる喜びと同じであるからである。然し先生が健康でおられることは平素の御養生と鍛錬による賜によつて,今日の御長命を得ておられる。先生は芝居を観られる他は余り御趣味らしいものは私は知らない。然し身体を鍛えることに対しては,非常な努力をせられておられる。先生は御若い頃台湾か硫球におられた時にアメーバ赤痢にかかられ,長崎から慶応に来られてからも,時々此赤痢では惱まされて,下痢の為にお休みになることはあつた。その為に食事には常に注意せられて,病院の食事の如きものは殆ど召し上がられず,奥樣御手製のお弁当を召し上つておられた。そして教授会の御宴会でも和食の時は出席なされず,洋食の時のみに御出席せられたと云う事を聞いておつた。それで,医局員の赴任送別会,新入生歓迎会等も自然洋食にして先生の御出席を願つた程である。此食事については奥様は並々ならぬ御苦心をしたらしいのである。然しその後は余り下痢の話は聞かなくなつたから恐らく全く治られたものと思う。
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