グラフ
川添正道先生の御逝去を悼む
pp.815-816
発行日 1957年12月10日
Published Date 1957/12/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409201648
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わが産科婦人科学会の最長老であった川添正道先生はまだ揺藍期を脱しなかつたわが国の産婦人科学のために種々の貢献をされ,また慶応大学産婦人科学教室の創設者としても大きな足跡を残された.そして昭和9年教授を辞されてからは川添病院を経営されて専ら医療を以て社会へ奉仕され,その後終戦の危期ものりこえて86才の高令にも拘らず,なお外来診療はいうに及ばず婦人科と産科の手術にも少しも衰えをみせない精力振りであつた。晩年は学会を遠ざかって居られたので,比較的若い人たちは親しく先生の謦咳に接する機会をえなかつたが,誰でも先生の壮者を凌ぐ活躍を伝え聞いて驚異のうちに,医人の達しうる精神力と体力の最高水準を示される点に注目していた。今,米寿をまたずして俄かに幽明境を異にするの止むなきに至つたことは独りわが産科婦人科学会のみでなく広く医学会のために誠に惜しみても余りある処であり,謹んで衷悼の意を表する次第である。
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