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管理(administration)とマネジメント(management)において留意すべき経営資源として,古くから「ヒト(人),モノ,カネ」が問われてきた.最近ではこれらに情報と時間を加えて考えるようになってきている.人は文字通り人材,モノは施設・設備,カネはキャッシュフロー,情報は知財(技術・ノウハウ),時間はリードタイム(素早い判断)である.病院施設などで考えてみれば,管理者は対象者に提供する“理学療法”について,理学療法士などの職員,施設・設備などの環境,レセプト業務(保健医療制度),技術水準の維持・改善,将来を見据えた運営戦略を総合的に管理・マネジメントすることが求められることになる.
その意味で本書を読んでみると,第1章において奈良氏の管理・マネジメントに対する考え方がきちんと示されていて安心する.すなわち,管理とマネジメントは重複する部分はあっても実際には相違点があることが説明されている.管理は英語で言えばadministrationで,行政とも訳され,制限することやコントロールする意味合いが強くなる.一方,マネジメントはマネジャーとして成果を引き出すという意味が込められている.野球の監督をmanagerというのは各選手の持ち味を引き出し,チームとしての成果を出すということであり理解しやすい.さて,本書の前半(2章〜4章)は指定規則の改正にともなって取り入れられた理学療法管理学について,まずは管理・マネジメントとは何かについて概要が説明されている.その後に,第5章と6章では橋元氏による職場・業務の管理,マネジメントと続き,この部分が本書の中心を構成していると読み取った.さらには,教育研究のマネジメント,保健医療福祉の諸制度,疾患別・病気別の理学療法マネジメントと細部も含めて全体像が示されており,その意味で本書は理学療法管理学の入門書として良書であることは間違いない.その一方,管理・マネジメントする際には,立場としての階層性(部長,科長,主任,一般職員)があるはずである.本書の各章・節が誰に対して書かれているのか,まずは読み手を明確にすることでさらに理解しやすくなるように感じた.また,第9章および10章においては疾患別・病期別にリスクマネジメントが記載されているが,奈良氏の冒頭の定義からすると,本来はリスク管理なのではないかと思う説明もあった.表現としては些細なことかもしれないが,理学療法の管理・マネジメントを成熟させるためには,用語をより明確に定義して用いることが大切であるように感じた.いずれにせよ,本書が多くの初学者と理学療法士とに読まれ,理学療法管理学について議論する教材となることを期待している.
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