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書評 —辻 哲也(編)/高倉保幸,髙島千敬,安藤牧子(編集協力)—「《標準理学療法学・作業療法学・言語聴覚障害学 別巻》がんのリハビリテーション」
中村 春基
1
1日本作業療法士協会
pp.852
発行日 2018年9月15日
Published Date 2018/9/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1551201310
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「がんのリハビリテーション」の入門書が,辻哲也氏ご編集のもと医学書院から発刊された.本書の序で辻氏は,わが国では,国民の2人に1人は生涯のうちにがんに罹患し3人に1人はがんで死亡する一方,がん経験者(サバイバー)は現在の約500万人から,今後,1年で60万人ずつ増え,「不治の病」であった時代から「がんと共存」する時代になったと述べている.国を挙げてがん対策が進められているゆえんであり,そこにはリハビリテーションの必要性があると思う.続いて辻氏は,「がんのリハビリテーション」には,がん医療全般の知識が必要とされると同時に,周術期,化学療法・放射線療法中・後の対応,骨転移,摂食嚥下障害,コミュニケーション障害,リンパ浮腫,緩和ケア,心のケアなど高度な専門性が要求されることを示し,高い専門知識と多職種協働の必要性を説いている.このようにがんのリハビリテーションが必要とされる現在にあって,わが国においては「がんのリハビリテーション」を学ぶための実践的な入門書がほとんどなかった.
本書は入門書として,EBMに配慮しつつ,執筆者の豊富な臨床経験から培われた内容が盛り込まれており,多職種協働を前提として,がんのリハビリテーションに関する基本的な医学的知識,各専門職の取り組みを具体的に紹介した内容となっている.学生においては臨床実習前に,また,臨床においては,がん患者と接する前にまず読むべき本であるといえる.
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