書評
「がんのリハビリテーションマニュアル―周術期から緩和ケアまで」―辻 哲也 編
水間 正澄
1
1昭和大学・リハビリテーション医学
pp.300
発行日 2012年4月20日
Published Date 2012/4/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1413102779
- フリーアクセス
- 文献概要
- 1ページ目
がんのリハビリテーションは,従来からリハビリテーション医学の1つの領域として,リハビリテーション科専門医の所属している施設では地道な活動がなされていたが,必ずしも欧米でみられるような専門の診療部門として運営されていたわけではなかった。特に,がん治療を専門とする病院においてはリハビリテーション科専門医が専従として勤務することも少なく,積極的なリハビリテーションアプローチが展開されていたとは言い難い。
本書を編集された辻 哲也氏は,2002年に開院した高度がん専門医療機関である静岡県立静岡がんセンターにおいて,わが国におけるがんリハビリテーション専門の診療部門としての先駆的な取り組みを開始された。その後,2006年には「がん対策基本法」が施行され,がんの予防,早期発見,研究推進とともに医療の質として患者のQOLの維持向上も求められ,リハビリテーションの役割も重視されるようになった。さらに,2010年度診療報酬改定では「がん患者リハビリテーション料」が新設され,その施設要件の1つとして多職種チームによる研修会受講も必須のものとなった。これを機にがん拠点病院のみならず一般病院においてもがんのリハビリテーションの必要性が認識され,多くの施設が研修会を受講し,施設認可を受けて本格的な取り組みを始めたところである。このような経緯の中,本書ががんのリハビリテーションの実践的な入門書として出版されたことは大変意義深い。
Copyright © 2012, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.