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本年2月18日,天皇陛下が冠動脈バイパス手術を受けられました.手術は無事終了し,手術後の回復も順調でほぼ予定通りの手術後15日目の3月4日に退院されました.私も国民の一人として手術が無事終わられたことに心から安堵し,予定通り退院されたことに心から嬉しく思いました.手術後の医師団の会見では術後早期からリハビリテーションを行うことが強調され,「心臓病でもリハビリをするのか」と驚かれた一般市民も少なくなかったと思います.また,全国の理学療法士も,陛下が身をもって心臓外科手術後のリハビリテーションの重要性をお示しになったことに感謝し,心臓リハビリテーション分野での国民からの期待を感じたことも多かったことと思います.天皇陛下は1999年のWCPT学会横浜大会の開会式に出席され,「理学療法が今後とも急速な医学の進歩の成果を取り入れながら,人々の生活の質を向上させるためにさらに貢献していくよう願っております」とのお言葉を頂戴しています.さらなる回復をご祈念申し上げたいと存じます.
さて,今回の特集は「心疾患に対する理学療法の新たな展開」です.今秋に更新される予定の新しいガイドラインの使用法についてガイドライン班長の野原隆司先生が理学療法士への檄文とともに解説しています.エンドユーザーの理学療法士はガイドライン(治療指針)の本質を読み解き正確に使用する責務があります.和温療法は物理療法の一つの温熱療法ですが,今では「Waon Therapy」と呼ばれ,患者の予後にも影響するとして,世界中から注目されています.補助人工心臓の進歩も著しく,これからは人工心臓を植え込んで自宅へ退院する患者も増えてくることと思います.心臓外科手術や周術期管理の進歩はめざましく,その進歩の中で新しい理学療法士の役割を確立しなければなりません.早期離床は腸管運動を促通しないことも報告されており,もはやただ早く起こせばいいという時代ではありません.電気刺激療法にも新たな可能性が見えてきました.病院の機能分化と強化,在宅医療体制の強化の社会的流れの中で,心疾患を在宅で診ることも必ず多くなってきます.一方で,心臓リハビリテーションは未だに理学療法士の中ではマイナーで,先輩方が「背中」で示すどころか,拒絶することもあり,急性期病院の中で未だに市民権を得ているとは言えません.陛下が身をもって心臓リハビリテーションの重要性を示された今こそが,理学療法士が心臓リハビリテーション分野で活躍を広げられる絶好のチャンスであることを先輩理学療法士は自覚すべきです.
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