とびら
養成校で教えてもらえない知を伝えたい
沖田 一彦
1
1県立広島大学保健福祉学部
pp.1067
発行日 2015年12月15日
Published Date 2015/12/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1551200397
- 有料閲覧
- 文献概要
私は理学療法士養成校の教員なので,学生の臨床実習地に訪問指導に出向く.あるとき訪問した急性期の病院で,学生に「何か困っていることはない?」と尋ねた.彼女は「実習指導者から,転倒による大腿骨頸部骨折で手術を受けた高齢の患者さんのベッドサイドでの評価を始めるよう指示されました.でも何度病室に行っても患者さんは,現在の痛みと転倒して動けなくなったときの衝撃を繰り返し訴えられるばかりで,評価がちっとも前に進まないんです.励ましてはいるんですけど……」と話した.「なぜだと思う?」と尋ねると,彼女は「高齢で独居だし,入院期間も限られているから,不安が強いのかもしれません」と答えた.
これに対し,私は「あなたも,この患者さんと同じ経験をしているはずだけど」と言った.彼女は「えっ!?」と驚いた.私は,この学生の大学受験の経験を引き合いに出した.ほとんどの高校生は,受験に関してクラス担任や進路指導教員からアドバイスを受ける.彼女も,教員の指導により筆者の所属する大学を受験していた.教員からは,「ここなら大丈夫!」と太鼓判を押されたらしい.私は,「そう言われて,あなたの不安は消えたかい?」と尋ねた.彼女は,「いいえ…….先生や家族や友人に何度も『私は本当に大丈夫でしょうか?』と聞きました」と述べた.さらに,受験直前には神社へ“合格祈願”に行ったとも.
Copyright © 2015, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.