書評
—奈良 勲(編集主幹)/木林 勉・河野光伸・大西秀明・影近謙治(編集)—「実学としてのリハビリテーション概観—理学療法士・作業療法士のために」
岡西 哲夫
1
1名古屋学院大学リハビリテーション学部理学療法学科
pp.437
発行日 2015年5月15日
Published Date 2015/5/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1551200203
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「リハビリテーション概論」とはどのような科目なのかを考える前提として,概論の意味をはっきりとすることが必要となる.なぜなら概論という言葉には二つの意味があるからである.一つは一般的概括的な知識を与えるものとしての概論であり,いま一つ別の意味は,「哲学」という意味があるという.澤瀉久敬(医学概論の創始者)は,医学概論は,医学の哲学(学問)として体系づけられるべきだと説いている.そうだとすれば,リハビリテーション概論も学問として,リハビリテーションとは何かを問い,チーム医療を基本とする各専門職の役割や,近未来における課題と展望について体系づけられた書籍を必要とするであろう.しかし,そのような書籍はこれまで見当たらなかった.おそらく,そのような書籍を出版するには,チーム医療に基づく職種間連携を必須とするからであろう.
このたび,このような困難を乗り越えて,時代の要請に応えるように,『実学としてのリハビリテーション概観』が発刊された.本書の最大の特徴は,それぞれの専門職が各分野の歴史と概要,役割と対象者,業務などについて記述・解説することによって,領域は重なっても果たしている役割は異なるという,医師,影近氏が,最も新しいモデルと紹介する「職種協業モデル(transdisciplinary model)」が,まさに一冊の書籍の中で実現されていることである.それは丁度,オーケストラが美しく統一されて演奏しているように心に響いてくる.
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