書評
—Eva Bower(編著),上杉雅之(監訳)—「脳性まひ児の家庭療育(原著第4版)」
高田 哲
1
1神戸大学大学院保健学研究科
pp.171
発行日 2015年2月15日
Published Date 2015/2/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1551200128
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子供に脳性まひがあることを知ったとき,多くの親は,戸惑いながらも,自分たちができることは何かを懸命に知ろうとする.臨床経験の豊富な医師やセラピストであっても,限られた診療時間のなかで,家族が満足できる答えを示すことはなかなか難しい.“Handling the Young Cerebral Palsied Child at Home”は,脳性まひのある子供を持つ両親のために,英国のセラピストNancie Finnieが豊かな臨床経験をもとに書いた素晴らしい実践書である.その後,本書はEva Bowerによって編集され,世界中の脳性まひのある子供の家族,小児神経科医,理学療法士,作業療法士に愛読されてきた.
本書の特徴は,多くのイラストとそこに添えられたわかりやすい説明文だと言える.しかし,本書の新鮮さはイラストだけにとどまらない.読者は,第1章のタイトルが「両親と専門家間のコミュニケーション」であることに,まず,驚くだろう.通常の教科書だと,脳性まひの臨床像や原因が最初に記載される.本書では,「子どもの生活における一般的な1日」を最初に掲げることによって,コミュニケーションの秘訣を教えてくれる.第2章は,予約や入院生活,退院など実用的な内容へと続く.「英国の子どもらは,病院内で家族と宿泊する権利が保障されています」などの記述に,英国の医療制度への興味がかき立てられる.第3章では,脳性まひのタイプ,原因,頻度などを含めた知識が簡潔にわかりやすく述べられている.第4章に掲載されているMRIや超音波画像も,鮮明で理解しやすいものが厳選されている.
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