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毎年,1万人以上の国家資格を取得した新人理学療法士が医療・福祉施設にとどまらずさまざまな領域に就職する.理学療法士の生涯学習システムは,1990年の「卒後教育システム検討委員会」発足から始まり,1997年新人教育プログラムの本格運用,2009年新専門理学療法士制度へと展開して,多くの理学療法士のキャリアデザイン(自分の人生における仕事の部分を,自分で自分らしく作り上げていく)の指針として注目されている.
本書は,新人理学療法士が,国民から求められるプロフェッショナルと呼ばれるようになるまでのロードマップを記した指南書である.第1章,第2章では,編者の斉藤氏と森本氏より,プロフェッショナルとしての心構え,組織人としてのあり方について,他者からの評価をもらうまで精進すること,いかに学ぶかという学びの切り口が述べられている.第3章からは医療機関別による知識と技術の整理・展開の方法が,卒後教育に力を入れている施設の例を通して,入院からの時系列で整理されている.もう一人の編者である島村氏からは,第4章において記録,評価,症例報告,研究発表の方法が,明瞭で容易にかつ具体的に示されている.第5章では,系統別に評価から治療介入の捉え方が臨床に役立つ視点から解説されている.また,第6章・第7章では,新人理学療法士が他職種とのかかわりを通じて,職場のなかで生かす症例報告のまとめ方から,次のステップとなる学会・研修会や職域・専門性といった情報について述べられている.加えて,本書のなかには先輩理学療法士からのメッセージが綴られている.人生訓としてもありがたい内容であり,読み進んでいくなかで自らを問い直す価値ある文言に出合うことと思う.
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