特集 呼吸理学療法の進歩
呼吸理学療法の過去・現在・未来
千住 秀明
1
,
髻谷 満
1
,
神津 玲
1
,
田中 貴子
1
Hideaki Senjyu
1
1長崎大学大学院医歯薬学総合研究科リハビリテーション科学講座
pp.955-962
発行日 2013年11月15日
Published Date 2013/11/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1551106461
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呼吸理学療法の過去
わが国の理学療法士の養成は,1963年国立療養所東京病院附属リハビリテーション学院の開校から始まった.2年後の1965年には理学療法士及び作業療法士法が公布・施行され,翌1966年に国家資格としての理学療法士が誕生した.
一方で呼吸理学療法は,理学療法士が誕生する以前から結核の外科療法の後療法として国立療養所を中心に行われていた(図1).1962年には長沢ら1)が『肺機能療法―lung physiotherapyの理論と実際』を出版し,1965年には,古賀ら2)によって肺理学療法について「日本胸部臨床」誌のなかでいち早く報告されている.それにもかかわらず,なぜ呼吸理学療法が日本の医療界で普及・発展しなかったのか,疑問がもたれるところである.その理由は,① 1950年代は死亡原因の第1位が結核から脳血管疾患へ推移するダイナミックな移行期であったこと,② 肺結核は空気感染が起こり得るため,排菌のある結核患者は感染を予防するために法律によって結核病棟への入院が義務づけられ社会から隔離されていたこと,③ 国民の関心が今日のように患者の社会復帰に向けられていなかったことなどが背景にあると思われる.
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