とびら
親族と患者
舟見 敬成
1
1一般財団法人総合南東北病院リハビリテーション科
pp.951
発行日 2013年11月15日
Published Date 2013/11/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1551106459
- 有料閲覧
- 文献概要
私の妻の近親者(以下,Aさん)が,胸部大動脈瘤の切迫破裂で失神発作を起こし,緊急で当院に入院治療となった.Aさんは80歳台半ばで,要介護1の夫との二人暮らし.2年ほど前から指摘されていた動脈瘤は,上行大動脈から弓部大動脈にかけて広い範囲に認められ,今回破裂した場所は70mmを超えていた.入院時のCTでは,血管外に出血を確認でき,非常に危険な状態であった.主治医からは,本人および家族に手術か保存治療かの選択を迫られた.そして,Aさんは,「これ以上長くない」,「手術をしたら,寝たきりになる」,「家族や親戚に迷惑をかけたくない」,「家に帰れなくなくなるのではないか」などの理由から保存治療を選んだ.
ICUにて厳格な降圧治療を受け,収縮期血圧が100mmHg以下でコントロールされたのち,入院3日目に心大血管リハビリテーションの処方となった.私は,Aさんのことをよく知っている.だから,かかわることに際して個人的な感情が入ることを恐れたが,一方で,こんな想いもあった.それは,私の近親者のほとんどは,職場から300kmも離れた新潟県の田舎にいる.万が一,私の近親者の誰かがAさんと同じような病気になったとしても,献身的にかかわることができない.だとしたら,自分の近親者に対するのと同じ気持ちでAさんを担当してみよう,そう思った.
Copyright © 2013, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.