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はじめに
理学療法士養成における卒前教育の根幹は「学内教育」と「臨床実習教育」である.学内教育はカリキュラムに則り,医学・理学療法学の基礎・専門科目を中心に理学療法士に必要な基礎知識や治療技術の習得を行うステージであり,臨床実習は学習で得た知識や技術を実際の医療場面で実行し,知識と実際の結び付けを行うステージである.
この両ステージは理学療法士としてスタートするための準備段階であり,医療人に育っていくには卒後の自己研鑽が不可欠である.自己研鑽には,それが実施できる環境の整備が必要であり,その範囲や内容も個々のニーズや能力に合わせて選択できるように準備されなければならない.卒後教育の内容については卒前の経験や知識レベルによって,基礎的なものから応用的なものまで,幅広いメニューを揃えることになる.
特に医療人として不可欠な臨床体験は,卒前では臨床実習に頼るところである.臨床での知識や技術を得るにはそれ相応の時間が必要となる.理学療法士教育が始まった初期の1966年には1,680時間あった実習時間が,1999年のカリキュラム改定では810時間へと半減している(表1)1).時間数や単位数の比率においても1966年は50.9%を占めていたものが,1999年では19.4%と,時間数からみると半減している(図1)2).
その原因として,国家試験の出題範囲や内容の難度が高くなってきたことへの対応で臨床科目や専門科目の時間を増やさざるを得ないこと,医療の進歩に伴う理学療法へのニーズの増加,加えて医療保険において疾患別診療報酬へと変わったことによる専門領域における疾患別科目の増加も無視できず,これらの影響が臨床実習時間の削減となって現れていると考える.
臨床家を育てる教育において,臨床を経験する時間の減少こそが重大な問題であるという認識のもとに,本稿では卒前の臨床実習の現状を考察しながら,日本理学療法士協会(以下,協会)が考える理学療法士教育の方向性を提示する.
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