特集 ICUにおける理学療法
ICUにおける小児心臓手術後の呼吸理学療法
稲員 恵美
1
Inakazu Emi
1
1静岡県立こども病院指導相談室
pp.101-107
発行日 2000年2月15日
Published Date 2000/2/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1551105488
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1.はじめに
先天性心疾患(以下CHD)に対する心臓手術後には,小児の呼吸器系の生理学的・解剖学的特徴1)に加え,CHD特有の呼吸器系の問題点のため,術後,重篤な無気肺が生じる.
この無気肺はスクウィージング(squeezing)やバイブレーション(vibration),軽打(percussion)2,3)などの従来から行われている呼吸理学療法(以下CPT)では改善できないこともあり,手技,姿勢管理などきめ細かい評価と治療計画が必要である.
当院でも心臓手術後の無気肺予防および改善を目的に,ICU看護婦により吸引前にsqueezingとあわせてvibrationを行う手技が一般的に行われ効果を得ている.
脆弱な胸郭は容易に圧縮でき,排痰が有効にできるように思えるが,我々は施行中に経皮的酸素飽和度(SpO2)が低下したり聴診上明らかに呼吸音が低下し,呼気が延長することを経験している.また脆弱な胸郭に対してvibration,shakingを行うと胸郭に触れているだけで圧縮刺激となり同様な反応を示す.更にsqueezingが有効な症例に行っても,squeezingに比べ即効性に乏しくICUでは効果的な手技ではない.Reinsらも小児心臓手術後の無気肺にvibration,percussionは無効であったと報告している4).このような症例の呼吸器系の問題点を考慮し,我々は胸郭を吸気位から更に拡張させる方法(以下,拡張法)を考案し臨床に用いている.
小児心臓手術後の無気肺の問題点と,我々が行っている拡張法および姿勢管理を紹介する.
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