特集 心疾患に対する理学療法の新たな展開
心臓外科手術後の腸管運動低下に対する理学療法
森沢 知之
1
,
高橋 哲也
2
,
西 信一
3
Tomoyuki Morisawa
1
1兵庫医療大学リハビリテーション学部
2東京工科大学医療保健学部
3兵庫医科大学病院ICU
pp.798-802
発行日 2012年9月15日
Published Date 2012/9/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1551102398
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はじめに
手術侵襲の大きな心臓外科手術後は腸管運動が低下しやすく,理学療法を実施する上で問題になることも少なくない.心臓外科手術後の消化器合併症の発生率は0.5~3.1%と報告されており1~5),呼吸器合併症や創部感染症など他の合併症と比べると発生率は少ない.しかし,いったん消化器合併症を発症するとその死亡率は17~63%と高率であり5~12),予後を左右する重大な合併症であるため,心臓外科手術後の管理において消化器合併症を予防することは重要である.
現在,手術の低侵襲化,術後管理の発展により,手術後早期からの離床が可能となった.順調例では手術後平均4.3日目には病棟内歩行が自立し13),合併症なく順調に回復する症例が多い.しかし一方では,手術後の各種合併症により離床が遅延し,ADL(activities of daily living)能力の低下や過度な運動耐容能低下を来す症例も一定数存在する.合併症発生後は呼吸理学療法など各種合併症に応じた対応が必要となるが,腸管運動の低下についても同様に,腸管運動促通を考慮した理学療法が必要である.
心臓外科術後の消化器合併症は麻痺性イレウスをはじめとする腸管運動の低下,腸管虚血,上部または下部消化管出血,消化器潰瘍など多岐にわたるが,本稿では特に腸管運動の低下について述べる.
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