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1.はじめに
昭和40年6月29日に法律137号として,理学療法士及び作業療法士が制定公布された.これは我が国の医学的リハビリテーション分野のうち,理学療法が本格的に発展する契機となった歴史的出来事であった.
昭和41年には,理学療法士を会員とする専門職団体として「理学療法士の人格,倫理及び学術技能を研鑽し,わが国の理学療法の普及向上を図るとともに国民保健の発展に寄与することを目的」として,110名の有志により日本理学療法士協会が設立された.それから34年が経過するなかで,理学療法(士)に係わる諸々の事柄が変遷してきたのは周知のごとくである.
本号の特集は,「理学療法士のアイデンティティー」である.Identity,アイデンティティーとは自己同一性(広辞苑:ある人の一貫性が成り立ち,それが時間的・空間的に他者や共同体にも認められていること)となっているが,自己認識,あるいは自己の存在性とその認識とがどれだけ明確であるか否かであろう.
アイデンティティーを自分の価値基準と表現する人もいるが,各人が自分自身をいかに認識しているか,そしてそれが他者や社会にも認知されているかといえる.これは各個人についていえることであるが,本号の特集は,理学療法士としてのアイデンティティーを問うことが企画の意図であることから,ここでは理学療法士としての自己同一性,自己認識,あるいは価値基準といった命題を議論することが本論の基本目的となる.しかし,副題が「理学療法体系の再構築」となっていることから,理学療法士のアイデンティティーと歴史的に変遷している理学療法体系との相関性を軸にして議論を展開する必要性があると考える.
これはそれぞれの時代に理学療法士が価値ある理学療法体系を構築することが理学療法士のアイデンティティーそのものであるとの仮説に基づく.よって,それぞれの時代における理学療法士のアイデンティティーと理学療法体系との関係を無視した議論は成立しないと考える.更に,広辞苑にもあるように,理学療法士のアイデンティティーとしての理学療法体系は他者・社会にも承認されることが必須となる.
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