とびら
生身の人間―原点をみつめて
北村 百江
1
1神奈川県立厚木病院整形外科理学療法室
pp.293
発行日 1996年5月15日
Published Date 1996/5/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1551104534
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蓮華草が五月晴れの下で紅紫色の花を輝かせて存在を主張しています.市街地の拡大に伴って一面に広がっていた蓮華畑も縮小を余儀なくされてきました.路地や広場で遊びまわっていた子供達の姿が見られなくなって久しくなります.出生数の減少に影響されて小児関係施設も様変わりし,内容の充実化・質的変化を表看板に各地域に療育センターや通園センターが根を広げつつ地道な療育活動を進めていることは周知のとおりです.
私の職場は総合病院で大勢の大人に混じって出生後数か月の子供も来室します.産婦人科から小児科に転床し地域に繋がる前の親子です.時間も場所も小児専用というわけにはいかず,室内への目配りからスクリーンで区切ることもできずに治療をしています.まず待合室で「可愛いですね,生後どのくらいですか.」「どうなさったんですか.」と話しかけ,治療中に泣くと「可愛想に.」とか,隣りの治療台からあやしてくれたり,親子が帰ると「あの子はどうしたの.」「あんな小さい時からリハビリするの.」などと理学療法士に質問してきたりするのです.不安だらけで親になったばかりでもある母としては,未熟な心にどのように響いているのでしょうか.
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