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Ⅰ.はじめに
急性期の脳卒中リハビリテーション(以下リハ)の重要性がいわれてから久しい.脳卒中急性期リハについては,1991年の日本リハ医学会のパネルディスカッションでも取り上げられた1).脳卒中での急性期リハの有効性や必要性については,リハに関わるものには当然のこととなりつつある.また,医療行政においても急性期からのリハを推進する意図が見受けられる.
しかし,実際に急性期のリハを実施できる施設はまだ少ないのが現実である.その原因としてはリハに関わる療法士やリハ医がまだ少ないこともあるが,急性期の治療を行っている内科医,脳神経外科医にまで,急性期リハの必要性と実際のリスク管理の方法が正しく理解されていないことも一因と思われる.したがって,リハ医学とリハ専門職に課される役割は急性期リハの必要性と重要性に関する理解を広めることであり,そのためにも臨床のなかで具体的な急性期リハの効果を示していく必要がある.
脳卒中のリハでは,歩行に主眼を置き退院後の生活を考慮した目標指向型リハプログラムが必須である2,3).急性期リハにおいても,単なる廃用の予防でなく,目標を達成するための積極的なリハを早くから行うことで,早期のADL自立やより高い目標の実現が可能なことを示し,周囲の理解を広めることが望まれる.本論文では,早期ADL自立をめざした急性期のリハについて,本学附属病院での実状などもふまえて論述する.
脳卒中における「急性期リハ」という言葉について脳卒中リハビリテーション治療マニュアル要項(案)(リハ医学会,1989)に以下の記載がある.「一般医学的には脳卒中発症後24時間以内などを急性期ということもあるが,リハ治療の場合には発症直後~2週間~1ヶ月程度を広く一括して早期と考えるほうが妥当と思われる」とある4).そこで,急性期からの歩行訓練についてであるが,狭義の急性期から脳卒中に関わる施設は限られており,後述するように,われわれの施設でも狭義の急性期から関わっている症例は少なく,今回はやや広い時期に及ぶ早期(発症直後から1か月程度)からの歩行訓練の問題について述べることとする.
また,くも膜下出血については,適切な治療で障害を残さないことが多く,発症後に血管攣縮や手術に伴う安静などの問題があり,急性期からのリハを行うにはリスクが高く,脳外科医の判断を得る必要があり,脳出血や脳梗塞と別に扱う必要がある.今回は脳卒中のなかで,脳出血と脳梗塞について述べることとした.
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