報告
歩行量と下肢の訓練頻度の関係―1万歩の筋活動に相当する下肢筋の訓練頻度について
市橋 則明
1
,
吉田 正樹
2
,
伊藤 浩充
3
,
森永 敏博
1
1京都大学医療技術短期大学部
2神戸大学工学部
3神戸大学医学部附属病院
pp.803-806
発行日 1995年11月15日
Published Date 1995/11/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1551104425
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Ⅰ.はじめに
廃用性筋萎縮は,筋の固定などによって生じる局所的要因による場合と全身的な活動性が低下することによる場合に大別される1).近年,特に全身的な活動性低下による廃用性筋萎縮が注目されており,リハビリテーションを受けて歩行自立している脳卒中患者群においてすら,非麻痺側(健側)の筋力低下や筋萎縮などの廃用症状が著しいことが報告されている2-7).このような健側の筋力低下や筋萎縮が存在することは,大川ら2)が指摘するように,現在のリハビリテーションが健側の筋活動量において不足しているためと考えられる.同様のことは,片麻痺患者の健側だけでなく,リハビリテーションの対象となるすべての疾患に当てはまると考えられる.すなわち,骨格筋の萎縮は老化や寝たきりの状態,術後の回復期などにみられる身体活動量の低下によって助長され,そこに共通しているのは筋活動量減少の影響である8)とされている.
このような観点から,われわれは,廃用性筋萎縮を防止するためには日常生活と同じ程度の筋活動量を下肢筋に与えることが必要と考えた.過去の報告で,われわれは歩行と臥床中によく処方されるSLR,SETTING,膝屈伸動作などの筋活動を比較した結果,歩行1万歩と同じだけの筋活動を得るにはかなりの量の(SLRで1,000回以上)回数を行う必要があり,一般に行われている筋力増強訓練では,筋活動量という面からは不足していることを指摘した9).そこで今回は,入院中の下肢の筋活動の低下を補う運動として,さらに活動性の高い運動を選び検討したので報告する.
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