特集 脳のシステム障害と理学療法
大脳・小脳神経回路の障害と理学療法
髙見 彰淑
1,2
Akiyoshi Takami
1,2
1弘前大学大学院保健学研究科障害保健学分野
2秋田県立脳血管研究センター神経内科学研究部
pp.13-18
発行日 2013年1月15日
Published Date 2013/1/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1551104169
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はじめに
小脳出血や後下小脳動脈(posterior inferior cerebellar artery:PICA)域の梗塞などで,小脳損傷の患者の理学療法を実行するとき,はじめに思い浮かべる臨床症状は,協調運動障害やめまい,筋緊張低下などではないだろうか.もちろん,それ自体は大きな阻害因子であり,そのための治療介入を行うべきである.
しかし,臨床上意欲がなく,介入しても拒否的になるケースを経験することはないだろうか.主症状に吐き気やめまいがあるので,動作練習はきついと判断し,それを受け入れたとしても,後日めまいなどがおさまっても発動性低下がしばらく続くケースがある.これは,小脳には大脳連合野,特に前頭連合野に線維連絡があり1~3),発動性低下や遂行機能障害などの認知障害が出現していることが推察されるからである.これらの症状は小脳損傷に限らず,視床損傷などでも現れ,大脳・小脳神経回路の認知ループ上の障害ととらえることができる.よって,大脳皮質自体の損傷以外にも,この経路の損傷ケースには理学療法上,運動障害に対する介入だけではなく,認知機能に関して対応する必要がある.
本稿では,小脳や視床などと大脳皮質間の相互連絡の機能について,理学療法上留意すべき点を考える.運動制御や運動学習を形成する運動ループも含めた大脳・小脳神経回路に関し,小脳からの視点を中心に,筆者の所属施設で実際に経験した症例を提示し報告していく.
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