特集 脳のシステム障害と理学療法
脳のシステムと高次脳機能障害
星 英司
1
Eiji Hoshi
1
1公益財団法人東京都医学総合研究所認知症・高次脳機能研究分野
pp.7-12
発行日 2013年1月15日
Published Date 2013/1/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1551104168
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はじめに
前頭葉は前頭連合野と一次運動野から構成されている.前頭連合野はヒトで大きく発達しており,記憶,注意,意思決定,行動計画などの高次脳機能の遂行において中心的な役割を果たしている.一方,一次運動野には体部位再現があり,顔,上肢,下肢の動きを司る領域が外側から内側にかけて並んでいる.前頭連合野と一次運動野の各領域は,大脳基底核や小脳と選択的に連絡しており,こうした脳部位間の機能連関によって日々の行動が実現される.一次運動野の機能が失われると体部位再現に対応した強い麻痺症状が現れることは,最終的な運動出力の場として極めて重要であることを示す.
これに対して,前頭連合野が障害されると,麻痺症状よりも高次脳機能障害が主要となる.この病態では,感覚機能や運動機能自体には基本的に問題がないので,周囲からの理解が得られにくい.しかし,高次脳機能障害はリハビリテーションの実施時や社会生活において問題となるので,運動障害と高次脳機能障害の両者に注目しながら患者さんの病態をとらえる必要がある.
本稿は,その一助となることをめざして,前頭葉,小脳,基底核のネットワークについて解説したい.
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