Japanese
English
特集 Neurotransmitter—新しい展望
小脳の神経回路と神経伝達物質
Neurotransmitters in the cerebellum: A review.
桜井 正樹
1
Masaki SAKURAI
1
1東京大学医学部第一生理学教室
1The First Department of Physiology, Faculty of Medicine, University of Tokyo
pp.656-669
発行日 1986年8月10日
Published Date 1986/8/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1431905815
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I.はじめに―小脳の神経回路―
小脳は皮質と白質,その中に埋まっている深部核から構成され,とくに皮質はその均一さ,単純さと規則正しさで,脳の中でもユニークな構造物である。細胞構築学的にいくつもの領野に分かたれる大脳皮質などと異なり,小脳皮質はどこをとってもほぼ同等の構造をしている。数種類の特徴的な神経要素が分子層,プルキンエ細胞層,顆粒層に規則正しく配列され,これら要素間の結合関係,興奮性,抑制性の別などが,若干の例外を除いて,ほぼ完全に解明されている26,45,106)。
図1に示すように,小脳皮質への主要な入力は苔状線維(mossy fiber:MF)と登上線維(climbing fiber:CF)の2つで,共に興奮性であり,両者とも,小脳核へ側枝を出した後,皮質へ入ってくると考えられている。出力はプルキンエ細胞(Purkinje cell:PC)ただ1つで,小脳核,前庭核へ投射し,これは抑制性である。MFは広く脊髄・脳幹の諸核に由来し,顆粒層内で特徴的な終末(ロゼット)をもって終わり,顆粒細胞とシナプスをつくる。CFは延髄の下オリーブ核のみが起始核と考えられており,直接PCに強い興奮性のシナプスをつくる。
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