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特集 脊髄損傷
脊髄損傷患者の関節可動域維持・増大訓練
Spinal Cord Injury: Range of Motion Exercises in Spinal Cord Injury
高橋 精一郎
1
Seiichiro TAKAHASHI
1
1九州リハビリテーション大学校
1Department of Physical Therapy, Kyushu College of Rehabilitation.
pp.223-227
発行日 1993年4月15日
Published Date 1993/4/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1551103716
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1初めに
関節可動域(以下,ROMと略.)はいかなる疾患においても日常生活活動(以下,ADLと略.)を円滑に行なうための基礎となるもので,筋力や巧緻性などとともにその機能は正常に保たれていることが必要である.
ADLの中でも衣服の着脱,坐位保持,立ち上がり,階段昇降などをはじめとして,ROMが高度に維持されていなければ実行できないものが多い.
脊髄損傷の特徴の一つは損傷高位によって運動機能障害をおおよそ予測できることで,それはROM制限の発生箇所を示唆するものでもある.
外傷性の脊髄損傷では急性期は脱臼骨折部の整復・固定が必要であり,一般的には8週から10週,長い場合は12週という期間を要する.この長期間の安静が損傷部位周辺だけでなく,全身のROM制限の一因になっているものの,これを避けることはできず,この間の対応がその後のROMを左右することになる.
脊髄損傷患者においては車いすを使用するケースが多く,ADLを確立するには椅坐位の獲得は不可欠で,これを継続していくには呼吸・循環機能の確保が必須である.このためには四肢に対するROMの維持・改善はもちろん,特に脊柱や胸郭に対しても機能が充分に発揮されるような対応策を講じておかなければならない.
ここでは外傷性の脊髄損傷を念頭においてADLと結び付けながら,損傷高位別によるROM訓練について考えたい.四肢はポイントのみにふれることとし,主に脊柱や胸郭のROM訓練について述べていきたい.ROM制限の定義・分類ならびに発生機序などについては成書を参考にしていただきたい.
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