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Ⅰ.初めに
イギリスのセント・ジョセフ・ホスピスのHanratty JF医師は,ホスピス(Hospice)の基本的な考えかたとして,「ホスピスとは,治癒の見込みの無い人々がもつ,様々な痛み,死への恐れ,不安,孤独感等を和らげ,最後の瞬間まで平穏で,しかも人間としての尊厳を保ちながら,価値ある人生を生き抜いていただくために,医師,看護婦,ソーシャルワーカー,理学療法士,牧師等が,チームを組んでケアをする場所である.もちろん,患者ばかりでなく,家族のための支えと援助も重要である.」1)と述べている.
また,柏木はホスピスプログラムを実現させるためには,症状のコントロール,良いコミニュケーション,個別性を重んじたケア,魂のケアの四つの点が重要であると述べ,具体的にホスピスでの働きを示している2).
1981年,我が国で最初の施設としてのホスピスが誕生し(聖隷三方原病院),1984年4月,当院にも23床のホスピス病棟が開設された.以来ホスピスに対する関心が高まり,1990年4月,厚生省も健康保険に「緩和ケア病棟入院料」を新設し,その必要性を認めるようになった.
緩和ケア病棟とは,主に末期の悪性腫瘍の患者に対して,緩和ケアを行なう病棟であり,厚生大臣が承認した施設に限って,一日につき2500点(1992年4月より3000点)が算定できるというものである.この保険点数は,注射・処置・看護・理学療法などをどれだけ行なっても同額で,診療にかかる費用はすべてこの「緩和ケア病棟入院料」に含まれている.
1992年7月現在,我が国には7か所の厚生省認定の緩和ケア病棟(ホスピス)がある(表1).
当院ホスピスには,現在専任のスタッフとして,医師4名,看護婦19名,病棟書記1名,秘書2名が配属されており,他に14名のボランティア,そして兼任の,保健婦(訪問看護),ソーシャルワーカー,牧師,理学療法士・作業療法士・言語療法士,薬剤士,栄養士などがかかわっている.
終末期の患者や家族は,身体的,精神的,社会的,宗教的な問題を抱えている.このような多様なニードに答えるためには,スタッフの側がそれぞれ専門分野を生かしたチームを組んで,専門家の協力によって支えていくことが重要である3).
今回,ホスピスにかかわる理学療法士として,患者のQuality of Lifeにどう貢献できるのか,またチームメンバーとしての役割は,どのようなものかを報告する.
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