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はじめに
全米ホスピス協会の定義では,ホスピスとは末期患者とその家族を家や入院体制の中で医学的に管理するとともに,看護を主体とした継続的なプログラムをもって支えていこうとするものである.その特色は苦痛の緩和や不快な症状のコントロールが中心で,キュアよりケアに重点が置かれている1~3).アメリカ合衆国ではすでに1,800ほどのホスピスがあり,在宅ホスピス・ケアも含めた終末期医療が積極的に行われている.日本は今,黎明期であり,現在8つのホスピス,5つの末期ケア研究グループがあり,3つのホスピスが計画中である3).しかし,我が国の医療の現状をみると,こうした末期医療におけるケアについては,必ずしも十分に対応できているとは言えない4).日本においては一般に癌を告知しない傾向,風土として死を否定的に捉える傾向があり,ケアを専門とする医師・看護婦などのホスピス専門家が少ないこと,現行保険制度内で運営するのは経済的に困難である5)などの障害があるが,末期癌のケアに対する世論の高まりに呼応して,厚生省も末期医療に関するケアの在り方の検討会をつくって,その報告書4)も出されており,これからは終末期医療が積極的に進められていくものと思われる.
理学療法は末期患者の不快感を取り除き,その患者の最大の運動能力を引き出し,独立性を高めることにより,QOL(Quality of Life)を向上させる働きがあり,欧米ホスピスにおいては積極的にリハビリテーション(以下リハと略す)が行われている6,7).しかし,日本においては,終末期の生活機能の回復を援助する理学療法士が不足している4)との指摘もあり,まだ一般的には行われていない.そして,終末期のリハに対する評価に関する報告は,欧米・日本とも未だない.今回,当院ホスピスでの3年間のリハの成果を分析し,その役割と問題点について述べる.
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