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Ⅰ.初めに
リハビリテーション(以下,リハと略.)医学においてはその発足の当初から目標設定(goal setting)ということが強調されていた.筆者が1963年に行なった紹介をそのまま引用すると,次のようである.
「目標の設定とは個々の患者の回復能力rehabilitation potentialを判定し,妥当な目標を設定し,それに適した治療プログラムを組むことであり,正確な能力評価,予後の知識,臨床経験を必要とする.あまりに高度な目標を設定することは無益な努力を重ねることにもなり,患者の心理的負担をも大きくする.」1)
約30年後の今これを読み返すと,目標設定の中に治療プログラムを組むことまで含めている点でやや不正確であるが,大筋においては現在も妥当するように思われる.だいじなのは目標は現実的に到達可能なものでなければならず,それを正しく設定するためには現状の正確な把握,予後の知識,そして経験に基づいて将来をできる限り正確に予測することが必要だということである.
このように重要な目標設定であるが,古くから重要性が強調されてきた割には一人一人の,疾患・障害の種類も程度も異なり,社会的・家族的条件も違い,さらに個性や人生観・価値観まで異なっている患者について,どう目標を立てればよいのかという議論や具体的な手引きは一部を除いて2)ほとんど見られなかったと言ってよい.しかしその間にリハ医学をめぐる議論は種々の展開をみせ,目標設定とこれらの議論との関連をどう理解するかが大きな問題になってきている.例えば障害の構造の問題であり,QOLであり,リハ医療におけるチームワークの問題である.また従来習慣的に広く行なわれてきた長期ゴールと短期ゴールとの区別についても,振り返って考えることが必要になってきているように思われる.ここではこれらの問題について限られた誌面の中でできるだけ広く考え,特集への導入としたい.
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