クリニカルヒント
視点を変えて,心への配慮
福江 明
1
1高岡市立高岡市民病院物療科
pp.63
発行日 1992年1月15日
Published Date 1992/1/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1551103437
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発症後数年を経た脳卒中後遺症で,重度な片麻痺のAさんは,年齢も70歳を越えており,入院時代は歩行困難とされ,車いすで移動していた.やがて退院となり,家庭の事情で老人保健施設へ入所したが,本人の希望で,立つだけでもと長下肢装具を用い,平行棒内で立位保持訓練を試みた.本人もたいへん喜び,毎日熱心に取り組んでいるうちに,介助が不要になり,立つ時間も延び,遂につかまり歩きができるようになった.今後も杖歩行は困難かもしれないが,表情が明るくなり,生活にも活気が出てきた.
これは,私の大先輩で,現在は老人保健施設に勤務されているK先生から聞いた話である.実用的には無意味と考えられていた歩行が,視点を変えてみれば,心理面に大きな影響を与え,“受身的な生活を積極的なものに変える”という質の改善につながった.
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