特集 多胎児と家族への支援に取り組もう
出産前からの準備
一児死亡(双胎)時の母親への「いのち」の視点からの配慮
永島 絵理子
1
NAGASHIMA Eriko
1
1東邦大学医療センター大森病院新生児科臨床心理士・公認心理師
pp.1260-1263
発行日 2022年9月10日
Published Date 2022/9/10
DOI https://doi.org/10.24479/peri.0000000317
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はじめに
双胎妊娠は単体妊娠と比べ,母体のリスク要因が多く,胎児の予後に与える影響も多岐にわたる1)。近年,超音波検査などの医療機器の進歩により,出生前に胎児の状態を把握できるようになった。早期から治療に備えることが可能となったが,胎児の異常を告げられた妊婦や家族は,大きな不安を抱えながら出産までの日々を過ごしていくことになる。一絨毛膜二羊膜双胎児のうち,双胎間輸血症候群(TTTS)を発症したケースにおいては,胎盤に存在する吻合血管が血流の不均衡を起こし,2人の胎児の血流バランスが崩れた結果,一方が受血児,他方が供血児となることで両児に深刻な症状が生じる1)。当院ではその胎児治療〔胎児鏡下胎盤吻合血管レーザー凝固術(レーザー治療)〕を実施しており,胎児死亡や後遺症が残る確率は飛躍的に減少している。一方で,レーザー治療が先進的な治療であるがゆえに,治療後の胎児の状態を心配したり,治療自体に不安を感じる場合もある。また,TTTSに限らず双胎妊娠は早産,低体重で生まれる傾向もあることから,発達になんらかの問題が生じるのではないかと考える妊婦も少なくない。
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