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Ⅰ.初めに
一つの運動を引き起こすためには,それぞれに適した準備の姿勢が必要である.起立するとか,はう,歩く際にも運動に先行して一定の姿勢がとられている.これらの多くは反射活動による.それは姿勢反射(postural reflex)と呼ばれている.反射を引き起こすには視覚,平衡感覚,力覚,皮膚感覚などの感覚性入力が必要であることは言うまでも無い.
人が直立姿勢を保つには抗重力筋の筋固有反射系がつねに働いており,また電車など乗り物内でよろけそうになれば,倒れそうになる側の肢を踏みしめるとか,踏み出すなどして調節している.いずれも中枢神経系内の命令によっている.
姿勢反射は現れる部位によって三つに分けられている.局所に限局されたものはlocal static reactionと呼ばれ,肢とか腕などやや広い範囲であればsegmental static reactionと呼び,よりまとまった現象であればgeneral static reactionと呼んでいる.局所的のものとしては伸展反射,拮抗筋間の相互抑制,皮膚からの屈曲反射などが含まれる.やや広い範囲まで及ぶものとしては,交叉性伸展反射,左右の肢間の踏み直り反射などが挙げられ,全身にわたるものとしては頸とか迷路からの緊張性頸反射,緊張性迷路反射が主なものである.
姿勢を一定に保つ機構は単一の反射によるものは少なく,幾つかの反射系および随意運動(上位中枢からの調節)などが総合された形で行なわれている.神経機構については,古くSherrington(1906)はreflex standing,reflex stepping,reflex figureということばを用いて末梢神経からの神経活動の重要性を記載している(図1),現在はこれら反射性機構に加えて,中枢プログラムという考えかたに沿った研究が歩行運動を中心に進められ,姿勢,歩行の神経機構の多くが明らかにされている.中枢神経系内には足のパターン化された動きを引き起こすgeneratorが有り,それは末梢からのインパルスによって駆動されて反射性運動が引き起こされる.このgeneratorはより高位の中枢からの調節を受け,足の動きのリズム発生,リズムの速さの調節,大きさ(歩幅)の変化が生ずるものと考えられている(Grillner,1981).
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