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Ⅰ.初めに
リハビリテーション(rehabilitation)という用語は,小児領域,特に脳性麻痺児においてはハビリテーション(habilitation)という用法が正確であり,また一般的にはハビリテーションというよりは「療育」という用語が広く用いられているので,ここでもそれに従って「療育」を使わせていただくことを初めにお断りする.
ADLの「自立」を図り最終的に一般社会へ参加する基本的能力を「確立」することが,脳性麻痺児の療育の目的であり,その過程においては彼らが示す「成長・発達」に対して総合的な援助を行なっていくことが重要である.成人のそれは,自立を図り社会へ復帰する能力を「再確立または復権」するということであり,障害の「回復」過程に対して総合的な援助を行なっていくものである.したがって必然的に両者の(リ)ハビリテーションの間には,その内容を異にするものがある.それは小児の脳性麻痺と脳卒中後の成人片麻痺との対比によってしばしば説明されるが,両者の決定的相違は障害発生時の年齢的差異という点にある.
つまり脳における病変という意味においては両者は共通であるが,しかし脳性麻痺は脳の成熟途上において病変が成立したものであり,一方成人片麻痺は成熟脳の病変によるものである,という点において基本的に異なる.したがって成人の場合は独立した存在として,成長・発達を遂げ必要かつ十分なADL能力を身に付け,さらに豊富な社会経験もすでに有している時点においてもたらされた障害であるが,脳性麻痺児の場合は人生のごく初期の段階で成長・発達の異常がもたらされ,ADL能力はおろか社会経験も皆無である.
彼らは正しく歩いたことも無ければ,手を使って食事をしたり遊んだりしたことも無く,すべてがまったくの未知,未経験の状態から,成長とともに種々の能力を身に付けていかねばならない.さらに脳性麻痺児もまた正常児と同様に,加齢に応じてADL能力を身に付け幼児集団に交わり,学校教育へと進み,最終的に一般社会へと参加していかねばならない.すなわち彼らは脳性麻痺による運動機能障害や種々の障害という重荷を背負いながら,成人へ至るプロセスを経ていく必要がある.しかしながら脳性麻痺児と言えども,その成長・発達の過程に本質的な異常は無く,適切に援助していくことにより時とともに彼らは相応の成長・発達を示していく.このような点で脳性麻痺児の療育は複雑さと困難さとを伴う反面,成長・発達していくという希望も併せもっている.
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