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1.はじめに
理学療法における主要な目標の1つは,患者をして“直立二足歩行運動による移動動作手段”の獲得を図ることであり,そのためには一時的にしろ長期的にしろ,多少とも杖・歩行補助具(以下,歩行エイド)の助けを必要とする.立位・歩行障害を有する患者に対する,歩行エイドの正しい選択とその適応は,立位・歩行を可能とするばかりか,彼らのADLの自立・拡大を促し,更に社会参加の可能性と幅を広げていく.それゆえ歩行エイドは,それを必要とする患者にとっては,ADLおよび社会的自立のための運動・動作面における必需器具であり,我々理学療法士にとってはその技術の具象的表現として,いわば“シンボル的器具”の1つであるといえる.
筆者に与えられた課題は「障害児と杖・歩行補助具」であるが,小児療育の世界においてもいうまでもなく,多種多様な歩行エイドが用いられている.小児療育の場面における歩行エイドの適用は,基本的には成人のリハビリテーションにおける場合と同様である.また対象疾患も,脳性麻痺をはじめ脊髄疾患,筋疾患,骨系統疾患等々,成人の場台と同様に,多岐にわたる.ただ,運動障害の種別を問わず子どもの成長・発達に伴って状態の変動がみられたり,あるいは乳幼児や知的障害の合併等のために歩行エイドそのものの操作に困難をきたす等の点において,成人の場合と異なる.したがって,そのための特別な対応が必要となり,これらのことが小児療育の領域において歩行エイドを適用する上での特徴といえよう.
本論文においては,小児療育の領域において歩行エイドを適用するうえでの基本的な考え方(原則)について解説し,次いで現在用いられている各種歩行エイドについて分類,紹介をする.
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