書評
―黒川幸雄,他(シリーズ編集)/井上 保・鶴見隆正(責任編集)―「理学療法MOOK15子どもの理学療法」
山本 博子
1
1熊本リハビリテーション学院理学療法学科
pp.272
発行日 2009年3月15日
Published Date 2009/3/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1551101379
- フリーアクセス
- 文献概要
- 1ページ目
障がいを持った子どものリハビリテーションは,高木憲次博士の提唱するいわゆる療育思想をベースに,その時々の社会的影響を受けながら繰り広げられてきた.「療育」とは,本書に述べられているとおり治療と育成(教育)を意味するが,その「療」の部分において主体的に関わる理学療法士の方向性や役割もその時代のニーズに応えながら変化してきた.
今日においては,国際障害分類(ICIDH)から国際生活機能分類(ICF)へのパラダイムの移行に伴う視点の転換,また地域療育体制の整備による入所施設療育から在宅通所療育への転換などといった時代の流れのなか,子どものリハビリテーションにおいてもこれまでの障害・疾病モデルではなく,生活モデルを基盤とした理学療法の介入がさらに強く求められるようになってきた.理学療法士は,子どもがどのような環境のもと生活しているのか,その子どもや家族が今なにを必要としているのかを考え,理学療法を組み立てていくことが必要である.そして,子ども本人の能力を改善するとともに,周辺課題の解決と環境の調整を図りながら,子どもの生活に密着した理学療法を実践していかなければならない.そのためには,子どもに関する確かな知識や技術はもとより,地域社会のなかで障がいを持つ子どもを支援する療育の考え方やシステムを理解しておくことも必要となる.
Copyright © 2009, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.