書評
―久野研二・中西由起子 著―『リハビリテーション国際協力入門』
中西 正司
1
1全国自立生活センター協議会
pp.60
発行日 2005年1月15日
Published Date 2005/1/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1551102496
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久野研二,中西由起子という国際協力とCBRの専門家が,国際協力をしていくための手引書という体裁をとりながら,開発の専門知識を素人にもわかりやすく説明してくれる.医学モデル,社会モデル,統合モデル,差異モデル,家族モデルなど障害を理解するための様々なモデルが提示されている.これらのモデルの中にも一般にまだ知られていない目新しいものがあるうえ,障害者支援の取り組み方の様々なアプローチ方法の説明が続き,参加型,複線型,目標展開型などなど著者が英国の大学で習得した最新の該博な知識が展開される.最後に具体的な取り組み方法として,CBRと自立生活運動が取り上げられる労作である.
地域開発に障害当事者の視点を取り入れるだけでなく,当事者の参加が必要だというところまできていることは,本書でも指摘されているところである.しかし,自立生活運動の視点から言えば,「障害当事者のことは,当事者に聞いてほしい,任せてほしい」と言う声が上がるのは当然のことである.開発の過程でお客様として呼ばれるだけで主権者になれないのであれば,当事者は納得しないであろう.例えば,当事者が主催するCBRとしてバングラディシュBPKSのCBRがある.今後この種のものが専門家にどう評価されるかと,本書を読みながらその今後の展開を興味をもって見つめている.
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