書評
久野研二・中西由起子 著「リハビリテーション国際協力入門」
穂坂 光彦
1
1日本福祉大学
pp.221
発行日 2005年3月10日
Published Date 2005/3/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1552102774
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冒頭のイラストが象徴的だ.「耳の聞こえない子のために,補聴器の申請と学校の入学手続きをしてきてあげたわ」と,意気揚々と訪ねてきたワーカーに対して,「その子は昨日,飢えと下痢で死んでしまったの」と,小さな亡骸の傍らで,若い母親は答える.障害が,障害としてではなく,村の生活のありよう全体として理解されねばならない現実があることを,それは告げる.
したがって本書は,保健医療の専門分野の枠内で「途上国で障害リハビリテーションをどう施すか」を教える入門書ではない.貧困や剝奪や差別と重ね合わせながら社会のなかでの「障害」をどう捉えるか,そのうえでなお固有な領域としての「障害」にどうアプローチするか ― その答ではなく,それを考える方法を示すガイドである.
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