書評
―山岸茂則(編)―「臨床実践 動きのとらえかた―何をみるのか その思考と試行」
加藤 浩
1
1九州看護福祉大学看護福祉学部リハビリテーション学科
pp.819
発行日 2012年9月15日
Published Date 2012/9/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1551102401
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編者の「山岸茂則先生」と言えば,昨年,同社から“実践MOOK・理学療法プラクティス”シリーズの『運動連鎖~リンクする身体』をゲスト編集され,その内容は臨床現場で活躍中の臨床家に様々な新しい視座を与え好評を博している.その続編となるのが,今回の『臨床実践 動きのとらえかた』である.“実践MOOK”では運動器疾患,スポーツ障害,神経系疾患,呼吸器疾患,後期高齢者,小児発達障害など臨床でよく経験する主要な疾患に対する多関節運動連鎖の視点からの実践的評価と治療内容が主に紹介されている.それに対して本書では,動作分析の考え方や分析の視点を基本動作である「寝返り」「起き上がり」「立ち上がり」,そして「歩行」などを例に,詳細かつ丁寧に解説されている.つまり“実践MOOK”が応用編とすれば,本書は基礎編の位置付けであろう.
なぜ今,あえて基礎なのか? 小生の頭には,ふと,むのたけじ氏の有名な詩(詩集たいまつⅠ)「より遠くへ跳ぼうとするものは,より長く助走距離を取る」が浮かんだ.基礎の土台なくして実践的な治療評価,さらには治療技術をどれだけ積み上げようとしても,所詮,それは成書の模倣であり,成書の技術を超えることはできない.読者諸氏が,そこからさらに創造的で新しい理学療法を展開するためには,しっかりと基礎から掘り下げ,臨床実践につなげるプロセスが必要である.本書を読み進むうちに,そのような編者の強い信念と熱い思いが伝わってきた.
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