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はじめに
心臓手術の最も大きな特徴は,術後に心臓の働きが劇的に改善することだと言われている1).術後に行われる心臓リハビリテーション(以下,心リハ)は,運動療法や患者教育を主体とし,運動耐容能改善,冠危険因子是正,長期二次予防効果,生命予後改善,quality of life(QOL)向上などが証明されている2,3).ここ10年で手術の低侵襲化,短時間作用性麻酔薬の使用が進み,早期離床,早期抜管,早期経口摂取が可能となった1,4~7).現在ではそのような心臓手術後の治療促進戦略におけるイノベーションの一つとして,Fast-Track Recovery Program(Fast-Track)が注目されている.
Fast-Trackとは,術前検査など術前の準備から始まり,術後数日で退院するまで急速に進行する周術期のプロトコールを指す.術後の罹病率および死亡率を最小限に抑えるために多くの外科手術の分野で導入されている.Fast-Trackに必要な要素は,短時間作用性麻酔薬の選択と用量設定,基準化された高度な手術手技,術後疼痛コントロール,早期抜管,早期歩行等である.主な利点に在院日数の短縮・コスト削減が挙げられ,欧米では近年,罹病率,死亡率を低下させる方向から周術期治療の上昇コストを抑える方向へと焦点が移っている4,5,8).
日本の心大血管疾患領域における急性期治療も年々変化し,循環器専門病院や大学病院では早期退院・早期社会復帰を目的としたクリニカルパスに準じる治療プログラムが実施されており7,9~11),当院と同じくガイドライン2,12)を基本的な進行基準とした上で独自のFast-Trackを実践する施設もある7,9,13,14).欧米と同様に医療経済学的側面も求められる昨今,Fast-Trackは罹病率や死亡率の増加なしで日本の医療システムへ安全に適応でき15),早期退院を可能にしている.
本稿では,当院が実践しているSuper Fast-Track Recovery Program(Super Fast-Track)と理学療法士の役割を紹介する.
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