入門講座 理学療法と吸引―実施にあたり確認しよう・3
実践編①:病院における理学療法士の吸引実施
前田 秀博
1
Hidehiro Maeda
1
1社会医療法人近森会近森病院理学療法科
pp.245-249
発行日 2012年3月15日
Published Date 2012/3/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1551102224
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はじめに
気管吸引は,気道内分泌物などによる気道閉塞を予防・改善するため,陰圧をかけたカテーテルを患者の気管へ挿入し気道開放を行う侵襲的な手技であり,医行為のひとつとされることから,かつて家族を除く限定された職種にのみ認められてきた1).2003年より筋委縮性側索硬化症(ALS)などの療養者に対して,一定条件下においてヘルパーや養護教育関係者による気管吸引が認められたが2),その条件には,緊急時の支援体制確保を前提とし同意書を交わしたうえ,療養環境の管理,実施者の教育,吸引範囲の限定(口鼻腔内および気管カニューレ内部まで)があった.理学療法士による吸引行為については,日本理学療法士協会により10年以上にわたって交渉が進められてきたが3),規制の見直しはこれまで慎重に扱われてきた経緯がある.
こうした中,厚生労働省は,日本の実情に即した医療スタッフの協働・連携によるチーム医療の推進について検討を重ね,2010年4月に「リハビリテーション関係職種の喀痰等の吸引に関して,理学療法・作業療法・言語訓練その他の訓練に含まれるものと解し,実施することができる行為として取り扱う」と発令した4).これは,多くの専門職種が目的と情報を共有し,業務を分担・連携・補完し合って,患者の状況に的確に対応する「チーム医療」の実践推進を意図したものとされる.
つまり,こうした医行為を実施する職種を拡大することで,人的資源を有効に活用して効率的でタイムリーな医療提供体制を実現し,より大きな効果を引き出そうとしたものと解釈できる.
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