入門講座 理学療法と吸引―実施にあたり確認しよう・2
基礎編②:吸引手順と理学療法士が注意すべき事項―気管吸引(挿管下・気道切開例)
高橋 仁美
1
Hitomi Takahashi
1
1市立秋田総合病院リハビリテーション科
pp.159-165
発行日 2012年2月15日
Published Date 2012/2/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1551102199
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はじめに
「気管吸引」は,挿管チューブ,または気管切開部に挿入されたカニューレ口から行われる(図1)1).適応は,咳嗽や呼吸理学療法などの侵襲性の少ない方法を実施したにもかかわらず喀痰の喀出が困難であり,気管内に分泌物が存在していると評価された場合である.具体的には,努力性呼吸の増強,チューブ内の視覚的な分泌物の確認,聴診による副雑音(断続性ラ音)・または呼吸音の低下の聴取,触診によるガスの移動に伴う振動,明らかな誤嚥などの他,人工呼吸中では気道内圧の増加や換気量低下を認められた際に必要となる.
気管吸引によって,気道閉塞,低酸素血症,呼吸困難,無気肺,人工呼吸器関連肺炎(ventilator associated pneumonia:VAP)などの呼吸器合併症を予防・改善する効果が期待できる.一方で,気管吸引は目視できない部分で行われる手技であるため,患者に多大な苦痛や侵襲を与える可能性がある.合併症としては,気道感染,気道粘膜損傷,肺胞虚脱・無気肺,低酸素血症・高炭酸ガス血症,気管支攣縮,不整脈・徐脈,異常血圧(高血圧・低血圧),頭蓋内圧上昇,臓器血流の低下,冠動脈の攣縮などが挙げられる.よって,患者の状況に応じて,できる限り生体への侵襲が少ない技術を選択し,実施する必要がある.
実際の吸引は,鼻腔(咽頭も含む)⇒口腔(咽頭も含む)⇒カフ上部(吸引ポートがある場合)⇒気管の順に行うのが理想的である.鼻腔内吸引と口腔内吸引については前回述べた2).本稿では,開放式と閉鎖式の気管吸引について,関連する留意点も含め解説する.
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