入門講座 理学療法と「てこ」・2
身体にみられる「てこ」
松原 貴子
1
Takako Matsubara
1
1日本福祉大学健康科学部リハビリテーション学科
pp.877-882
発行日 2011年10月15日
Published Date 2011/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1551102093
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てことトルクの基礎知識
てこは,支点に支えられた棒からなる単純な器具で,シーソーが典型例である.てこは,小さい力で大きなものを動かすことができ,また小さな運動を大きな運動に変えることができる.したがって,てこは簡単な原理であるけれども,日常生活だけでなく生体内においても非常に重要な役割を果たしている.さらに,てこは加わった力を回転力(モーメントmoment,またはトルクtorque)に変換することも可能である.つまり,支点まわりに働く回転する力がモーメントまたはトルク(以下,トルクで統一)ということになる(図1).関節の回転中心を支点に,骨をてこの棒に,筋の発揮する力が作用する点(筋の骨への付着部)を力点,外力や重り(重力)が加わる点を作用点に見立てると,筋骨格系はてこの原理に従って運動を生じさせることがわかる.
トルクには2種類あり,外力や重りなど外部重量(重力)によって生み出される回転力を外部トルク(external torque),それに対抗するように生体内部(筋)で生み出される回転力を内部トルク(internal torque)と言う.関節トルクとは内部トルクのことを指し,筋や腱,靱帯,骨,皮膚など関節の動きに抵抗性を与えるもののうち,特に関節運動に直接かかわる筋と腱により生み出されるトルクを関節トルクと呼んでいる.
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