入門講座 理学療法と「てこ」・1【新連載】
「てこ」の原理
田中 千歳
1
Chitose Tanaka
1
1国士舘大学理工学部理工学科建築学系
pp.787-791
発行日 2011年9月15日
Published Date 2011/9/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1551102065
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古代世界とてこ
てこは,昔から人々の生活と馴染みが深い.例えば,ピラミッドやスフィンクス,日本の城づくりなどで,さまざまな形でてこを垣間みることができる(図1).ピラミッドは,今から4,550年以上も前に,労働者が石切場で石を切り出し,その後,粗加工した状態で搬送して積み上げたものである.大きいピラミッドでは,1個当たり2~2.5トンの重さの石が300万個ほど使われている.搬送は,まず切り出した重い石をそりに乗せる.地面との摩擦力を小さくするために,そりの下にコロを入れ,コロから棒で押して搬送する(図2).わが国の城においても石垣用の石を運搬する時,有益な道具としててこが利用されていたらしい.
てこに関する歴史的事実では,紀元前214年のシラクサ市民の防戦が伝えられている.古代ローマ軍の軍艦が,シチリア島のシラクサにおいて,市民の「鉄の爪」によって軍艦を持ち上げられ,戦艦の兵士たちが海中に転落した.例え片側だけにしろ,巨大な戦艦を持ち上げる大きな力をシラクサ市民は得たのである(図3).
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