講座 炎症と理学療法・2
運動療法の抗炎症効果
沖田 孝一
1
Koichi Okita
1
1北翔大学生涯スポーツ学部スポーツ教育学科
pp.503-511
発行日 2011年6月15日
Published Date 2011/6/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1551101982
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はじめに
運動療法の効果に関する研究は多く,表1に示す通り,運動能力の向上はもちろん,疾患の予防,死亡率の低下など極めて多面的な効果が疫学的に証明されている1~4).これらの効果の背景には,抗酸化酵素の誘導を含む様々な細胞シグナル伝達系の活性化,遺伝子発現3),ミオカイン生成,特に動脈硬化・心血管疾患に関しては,原因となる高血圧,糖尿病,脂質異常症の改善の他,粥状病巣の進展過程に深く関与する炎症および酸化ストレスに関連した分子レベルの変化があることが明らかにされている(図1).また最近では,運動が中枢神経系に与える著明な効果が注目されている4).
一方,遷延する低度の炎症(low-grade inflammation)が,動脈硬化のみならず種々の慢性病態に深く関わっていることが明らかにされつつある.そして,その見地から運動療法の潜在力が見直されている.本項では,low-grade inflammationと疾患の関連について概説し,抗炎症療法としての運動の可能性について考察する.
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