臨時増刊特集 これだけは知っておきたい治療のポイント 第2集
IV.消化管疾患
2.問題となる薬剤の適応と注意
抗炎症剤
平山 洋二
1
,
丹羽 寛文
1
1東大第1内科
pp.1886-1887
発行日 1978年12月5日
Published Date 1978/12/5
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402208188
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はじめに
抗炎症剤のうち,副腎皮質ステロイドについては別項に記載があるので,ここでは非ステロイド抗炎症剤(以下単に抗炎症剤と記す)について述べる.抗炎症剤には鎮痛,解熱作用があり,広く用いられているが,ことにアスピリンは家庭常備薬ともなるほどに普及している.また,慢性関節リウマチに対しても抗炎症剤は多用されており,この場合その投与期間は長期に及ぶのが通常である.抗炎症剤は,一般に安全な副作用の少ない薬剤として安易に用いられているむきがあるが,実際にはその副作用は多岐にわたり,消化管,皮膚,肝,腎,骨髄,中枢神経などの障害が認められている.ことに長期使用の場合はその頻度も多くなる.これら副作用のうち最も一般的なものは消化管障害であり,各薬剤とも不定の胃症状をきたし,また,既存の消化性潰瘍の悪化をみるなどしばしば問題となっている.抗炎症剤による胃障害は,主として胃壁に直接作用して粘膜障害を起こすものであるが,坐薬のような剤型のものでも,吸収されたのち血行性に胃を障害する場合もある.
抗炎症剤による胃腸障害は動物実験でも明らかにされており,ラットではアスピリンによって慢性潰瘍の悪化をみ,また,インドメサシン,フェニルブタゾンの常用量で胃および小腸に急性潰瘍の発生と,同時に出血や穿孔をきたしたという報告もある.
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